千羽鶴

前の職場の病棟にいた頃の話・・・
慢性関節リウマチで長く入院しているTさんという、男性患者さんがいてね、
温厚で、いつもニコニコ笑ってる、静かな人でね、
看護婦から見たら、いい患者さんだったんだけど、
家族はあんまり、面会にこない・・・
・・・で、ベッドサイドに千羽鶴飾っててね、お孫さんからだって大事にしてた。
その、Tさんが、亡くなって、娘さんが荷物整理に来たんだけど、
その、千羽鶴忘れていった・・・
とりあえず、詰め所の横の物品庫にとりあえずしまって、電話かけた。
で、娘さんが「捨ててください・・・」って・・・
でも、なんだか捨てられなくて、しばらく保管しておいたのね・・・
3ヶ月くらいたって、物品庫の整理してた助手さんが、これ、どうします?って
婦長がね、捨てましょう・・・ってことで、地下の消却室にもってった・・・
5時くらいかなぁ、ボイラーのおじさんから電話きてね、
『○○号室のTさんという患者さんが、千羽鶴返せってきてるんだけど、
  焼いちゃったんだよねぇ・・・詰め所で説明してよ』って・・・
みんな ぎょっとしてね、
おじさん、そんなひといないよぉ・・・どんな人?って・・・
『いやっ 来てるんだって・・・あれぇ?』・・・
おじさんが振り向いたら、いない・・・
でも、おじさんが見た特徴が・・・うん、Tさんなんだよね・・・
それにしても、ボイラーの事務室なんて、患者さんが行ける場所じゃない
かなり、いりくんでるし・・・
やっぱり、Tさん、取りに行ったんだよね・・・

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